【FPの実務】ふるさと納税、実質2,000円のわけは?──「上限」の正体から説明する
ふるさと納税に興味のあるお客様から、こんな相談が届く。
「ふるさと納税に興味があります。実質2,000円で返礼品がもらえると聞きましたが、仕組みと手続きを教えてください。」
FPの実務で、ふるさと納税の説明はよく扱う。力になるのは、上限の目安表を見せることよりも「上限が何で決まっているか」を伝えられたときだ。仕組みが分かれば、その方の状況が変わっても自分で判断できるようになる。この記事では、上限の正体と手続きの落とし穴を、条文から整理する。
まず結論:「実質2,000円」は3つの控除の合計で成り立つ
ふるさと納税という名前の税金はない。自治体への寄附であり、次の3つの控除が組み合わさっている。
| 控除 | 条文 | |
|---|---|---|
| ① | 所得税の寄附金控除 | 所得税法78条 |
| ② | 住民税の寄附金税額控除(基本分) | 地方税法37条の2第1項、314条の7第1項 |
| ③ | 住民税の特例控除額 | 地方税法37条の2第11項、314条の7第11項 |
居住者が、各年において、特定寄附金を支出した場合において、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超えるときは、その超える金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。
一 その年中に支出した特定寄附金の額の合計額(当該合計額が……総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額を超える場合には、当該百分の四十に相当する金額)
二 二千円(所得税法78条1項)
2号の2,000円が、「実質2,000円」の出どころである。控除の対象になるのは2,000円を超える部分だからだ。
ここで押さえたいのは、①だけでは2,000円で済まないことである。所得税法78条は所得から差し引く(所得控除)仕組みなので、戻るのは寄附額そのものではなくその方の税率をかけた分にとどまる。
残りを埋めているのが③の特例控除額である。この③があるから「実質2,000円」になる。そして③には天井がある。それが上限の正体になる。
上限の正体——住民税所得割の20%
第一項の特例控除額は、同項の所得割の納税義務者が前年中に支出した特例控除対象寄附金の額の合計額のうち二千円を超える金額に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た金額の五分の二(当該納税義務者が指定都市の区域内に住所を有する場合には、五分の一)に相当する金額(当該金額が当該納税義務者の……所得割の額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、当該百分の二十に相当する金額)とする。(地方税法37条の2第11項)
末尾のかっこ書が上限の正体である。
特例控除額は、住民税の所得割の額の20%を超えられない。市町村民税の側にも同じ規定があるので、あわせて所得割の20%が天井になる。
ここを超えて寄附した分は、③の上乗せが効かなくなる。自己負担が2,000円で収まらなくなるのは、この天井を超えたときである。
だから上限は「年収」で決まっているのではない。住民税の所得割の額で決まっている。年収が同じでも、扶養の人数、社会保険料、住宅ローン控除、医療費控除などで所得割の額が変われば、上限も変わる。
お客様に伝えるべきはこの構造である。「年収◯◯万円なら◯円まで」という表を渡すより、「住民税がいくらかかっているかで決まります」と伝えるほうが正確で、状況が変わっても応用が利く。
本文の五分の二にも意味がある。①所得税で戻る分と②住民税の基本分を差し引いた残りを③が埋める設計になっており、そのために所得税の税率に応じた割合表が11項各号に置かれている。税率の高い方ほど①で戻る割合が大きく、③の割合は小さくなる。合計が寄附額から2,000円を引いた額になるように組まれている。
なお、寄附額そのものにも枠がある。地方税法37条の2第1項は、寄附金の合計額が総所得金額等の合計額の百分の三十を超える場合はその30%相当額を限度とし、所得税法78条1項1号は百分の四十を限度としている。所得税と住民税で割合が違う。
どこへ寄附するか——指定された自治体に限られる
前項の特例控除対象寄附金とは、同項第一号に掲げる寄附金……であつて、第一号、第四号及び第五号に掲げる基準(都道府県等が返礼品等……を提供する場合には、次に掲げる基準)に適合する都道府県等として総務大臣が指定するものに対するものをいう。
二 都道府県等が個別の第一号寄附金の受領に伴い提供する返礼品等の調達に要する費用の額……が、いずれも当該都道府県等が受領する当該第一号寄附金の額の百分の三十に相当する金額以下であること。(地方税法37条の2第2項)
③の特例控除が使えるのは、総務大臣が指定した自治体への寄附だけである。指定されていない自治体への寄附も①②の控除は受けられるが、③がない分、自己負担は2,000円では済まない。
9項は、指定されているかどうかの判定を「所得割の納税義務者が第一号寄附金を支出した時に」行うとしている。寄附した時点で判定する。
2項2号の返礼品の調達費用は寄附額の30%以下という基準も、条文に書かれている。返礼品の水準が抑えられているのはこの規定による。
ワンストップ特例——「5団体」の数え方と、超えたときの扱い
前項の規定による申告特例通知書の送付の求め……は、申告特例対象寄附者が当該申告特例の求めに係る特例控除対象寄附金を支出する年……に支出する特例控除対象寄附金について申告特例の求めを行う都道府県知事等の数が五以下であると見込まれる場合に限り、行うことができる。(地方税法附則7条2項)
数えるのは寄附の回数ではなく、申請を出す自治体の数である。条文が「都道府県知事等の数」としている。
だから同じ自治体に3回寄附しても1団体と数える。「5回まで」ではなく「5自治体まで」である。ここは相談でよく取り違えられる。
また1項は、この特例を使えるのを確定申告書を提出する義務がないと見込まれる者などに限っている。もともと確定申告をする方は対象外である。
申告特例の求めを行つた者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告特例の求めを行つた者が申告特例対象年に支出した特例控除対象寄附金に係る申告特例の求め……については、いずれもなかつたものとみなす。
二 ……道府県民税の所得割について……申告書の提出をしたとき。
三 ……申告特例通知書を送付した都道府県知事等の数が五を超えたとき。(地方税法附則7条6項)
柱書の「いずれもなかつたものとみなす」が重い。
3号に当たった場合、6件目だけが無効になるのではない。その年に申請した分が全部なかったことになる。
2号も同じ形である。あとから確定申告をすると、ワンストップの申請は全部なかったことになる。医療費控除や住宅ローン控除の初年度で確定申告をする方が、うっかり見落とす場面である。
ただし「なかったことになる」だけで、控除が消えるわけではない。確定申告で寄附金控除として申告し直せばよい。だから相談では「確定申告をされるなら、寄附金の受領証明書も一緒に出してください」と伝えておく。これを伝えておかないと、控除が受けられないまま終わる。
期限も条文にある。変更があったときの届出は翌年の1月10日まで(4項)、自治体から市町村長への通知は翌年の1月31日まで(5項)である。年末の寄附は申請書の締切が近いことを添える。
説明の順番——この順で伝える
- 寄附であって納税ではないことを伝える。控除は3つの組み合わせ。
- 2,000円の出どころを示す(所得税法78条1項2号)。
- 上限の正体を伝える。住民税所得割の20%(地方税法37条の2第11項かっこ書)。年収ではない。
- だから試算が要ると伝える。扶養・社会保険料・住宅ローン控除などで変わる。
- 指定された自治体かを確認していただく(同条2項・9項)。
- 手続きを選ぶ。確定申告か、ワンストップか。
- ワンストップは5自治体まで(附則7条2項)。回数ではなく自治体の数。
- 確定申告をするなら、ワンストップは全部無効(同条6項2号)。受領証明書を残しておいていただく。
- 年末の寄附は締切に注意(同条4項・5項)。
- 金額の試算は最新の資料で。総務省やポータルの試算、市区町村へ。
プロならこう説明する
「ふるさと納税」という名前ですが、制度としては自治体への寄附です。その寄附について、3つの控除が組み合わさって、結果として自己負担が2,000円に収まる形になっています。
2,000円という数字は、法律に書かれています。所得税の寄附金控除の条文が、「二千円」を超える部分を控除するとしているためです。
ここで、いちばん大事なところをお伝えします。上限が何で決まっているかです。
よく「年収◯◯万円なら◯円まで」という表を目にされると思います。あの表は目安としては便利なのですが、法律は年収で上限を決めていません。
条文は、上乗せ部分の控除について「所得割の額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、当該百分の二十に相当する金額」としています。つまりお住まいの自治体に納めている住民税の額で決まります。
ですので、同じ年収でも上限は変わります。お子さんの人数、社会保険料、住宅ローン控除や医療費控除をお使いかどうかで、住民税の額が変わるからです。
とくに住宅ローン控除をお使いの方はご注意ください。住民税がすでに減っていますと、その分だけ上限も下がります。
ですので、表の数字ではなく、ご自身の条件で試算していただくのが確実です。総務省のサイトや各ポータルに試算のページがありますので、ご一緒に確認しましょう。
次に、手続きです。2つの方法があります。
1つめが確定申告。2つめがワンストップ特例です。
ワンストップ特例には条件がありまして、もともと確定申告をされない方が対象です。そして申請する自治体が5つまでです。
ここは間違えやすいところですので、はっきり申し上げます。数えるのは寄附の回数ではなく、自治体の数です。同じ自治体に3回寄附されても、1つと数えます。
そして、お伝えしておきたいことが2つあります。
1つめ。6つ目の自治体に申請しますと、6つ目だけでなく、その年に申請した分が全部なかったことになります。条文が「いずれもなかつたものとみなす」と書いています。
2つめ。あとから確定申告をされた場合も同じで、ワンストップの申請は全部なかったことになります。医療費控除や、住宅ローン控除の1年目で確定申告をされる場合が、これに当たります。
ただし、控除そのものが消えるわけではありません。確定申告のときに寄附金控除としてまとめて申告していただければ大丈夫です。
ですので、寄附金の受領証明書は必ず保管しておいてください。ワンストップの申請をされた場合でも、です。ここだけ気をつけていただければ、取り返しがつかないことにはなりません。
最後に、年末の寄附についてです。ワンストップの申請書には期限がありまして、変更のお届けは翌年1月10日までと条文で決まっています。12月に寄附される場合は、申請書の提出をお忘れなく。
それでは、まずご自身の上限を試算するところから始めましょう。住民税の額が分かる資料——住民税の決定通知書や源泉徴収票をお持ちでしたら、より正確に出せます。
よくある質問と、その答え方
「年収が同じ人と、上限は同じですよね」
同じとは限らない。地方税法37条の2第11項のかっこ書は、特例控除額の天井を「所得割の額の百分の二十に相当する金額」としている。上限は年収ではなく住民税所得割の額で決まる。扶養の人数、社会保険料、住宅ローン控除、医療費控除などで所得割の額が変われば上限も変わる。目安表ではなく、その方の条件で試算する。
「ワンストップは5回までですよね」
5回ではなく5自治体までである。地方税法附則7条2項は「申告特例の求めを行う都道府県知事等の数が五以下であると見込まれる場合に限り」としている。同じ自治体に何度寄附しても1団体と数える。反対に、少額を6つの自治体に分けると超える。
「6つ目に申請したら、6つ目だけ確定申告すればよいですか」
そうではない。附則7条6項の柱書は「いずれもなかつたものとみなす」としており、3号(5を超えたとき)に当たるとその年に申請した分が全部なかったことになる。全件を確定申告で寄附金控除として申告し直すことになる。ただし控除が消えるわけではないので、受領証明書をすべて保管しておけば取り返しがつく。
「ワンストップを出したので、医療費控除の確定申告をしても大丈夫ですよね」
確定申告をすると、ワンストップは無効になる。附則7条6項2号は、住民税の所得割について申告書の提出をしたときを挙げており、確定申告の提出はこれに含まれる(45条の3第1項によるみなし)。寄附金の分も一緒に確定申告に含める必要がある。医療費控除や住宅ローン控除の初年度で申告される方には、先に伝えておく。
説明で外したくないポイント
- 3つの控除の組み合わせで「実質2,000円」になる(所法78条、地方税法37条の2第1項・11項ほか)。
- 2,000円は所得税法78条1項2号の数字。
- 上限の正体は住民税所得割の20%(地方税法37条の2第11項かっこ書)。年収ではない。
- 住宅ローン控除などで住民税が減れば、上限も下がる。
- 寄附額の枠は住民税30%・所得税40%で割合が違う(地方税法37条の2第1項、所法78条1項1号)。
- 特例控除が使えるのは総務大臣が指定した自治体(同条2項)。判定は寄附した時点(同条9項)。
- 返礼品の調達費用は寄附額の30%以下(同条2項2号)。
- ワンストップは5自治体まで。回数ではない(附則7条2項)。
- 超えた/確定申告したときは、その年の全部が無効(同条6項2号・3号)。受領証明書を保管しておけば申告し直せる。
- 変更の届出は翌年1月10日まで(同条4項)。年末の寄附は締切が近い。
根拠条文のまとめ
| 条文 | 見出し | この記事で使った内容 |
|---|---|---|
| 所得税法78条1項 | 寄附金控除 | 2,000円を超える部分を所得から控除。総所得金額等の40%が限度 |
| 地方税法37条の2第1項 | 寄附金税額控除 | 2,000円超の4%(指定都市2%)+特例控除額。寄附額は総所得金額等の30%が限度 |
| 地方税法37条の2第2項 | 同上 | 特例控除対象寄附金は総務大臣が指定する自治体へのもの。2号で返礼品調達費用30%以下 |
| 地方税法37条の2第9項 | 同上 | 指定の判定は寄附を支出した時 |
| 地方税法37条の2第11項 | 同上 | 特例控除額の算式と、所得割の額の20%という天井 |
| 地方税法314条の7 | 寄附金税額控除(市町村民税) | 市町村民税側の同趣旨の規定 |
| 地方税法附則7条1項・2項 | 申告の特例 | 確定申告義務がないと見込まれる者。申請先は5団体以下 |
| 地方税法附則7条4項・5項 | 同上 | 変更の届出は翌年1月10日まで。通知書の送付は翌年1月31日まで |
| 地方税法附則7条6項 | 同上 | 2号(申告書を提出したとき)・3号(5を超えたとき)で、いずれもなかったものとみなす |
| 地方税法附則7条の2 | 申告特例控除額 | ワンストップの場合に所得税分に相当する額を住民税から控除 |